Alex Henry FosterとのQ&A

[パート 1]

まず初めに、私の質問に答える時間を取ってくれたAlexに感謝します。前回送ったLa Maison de Tangerのニュースレター内であなたのインタビューを掲載したところ、反響が大きかったので、あなたの旅行体験やロックンロールの冒険の話を毎回の恒例にしたら良いかもしれないと思いました。というわけで、Oasisマガジン第二弾の質問をお楽しみ下さい:
ホテルを所有することは、仲間であるJeffとの共通したヴィジョンでしたよね。お二人の旅行経験がホテル所有への気持ちに更に影響を与えただろうと思うのですが。 

Alex:もちろんだよ。でも僕らにとっては、何よりも体験について。とても有名で高額なホテルでがっかりしたこともあるし、一方で、とても質素な場所で素晴らしい時間を過ごしたこともある。そこで何を分かち合いたいかによるんだ。僕らとしては、ブティックホテルだから、ここをAlex Henry Fosterへのトリビュートみたいにすることなく、僕ら自身のカラーを加えたかった。だって、このホテルをユニークな場所にするのは、ここで時間を過ごす招待を受け入れると決めた人たちであり、一度滞在することが決まったら、あとは彼らがこの場所を家のように感じられるよう、あらゆる努力をすることに尽きる。だって、家のように感じてもらえたら、その時点でホテルの精神が変わるからね。それはご褒美みたいなものだよ。そうでなきゃ、魂のない、ただ寝るだけの場所になってしまう。

その場合の”家”とは、あなたにとって何ですか?

Alex:ホテルの予約をした時点から始まるんだ。ホテルマネジャーが、到着時のことについて、タンジェに来るのは初めてかどうか、そして、特別な要望や滞在前に準備しておいて欲しいことはあるかを尋ねる。そうして、僕らのゲストを迎える人たちへと戻るんだ。ホテルの送迎を頼んでいるタクシー会社とかね。タクシーでの送迎もホテル宿泊体験の一部だから。人とのコンタクトにおいて、歓迎の心は必要不可欠だ。そうして、人が見るもの、香るもの、聞くものについて…タンジェは最初、混乱するかもしれないから、メゾンに着いたらすぐに平和と心地良さを感じてもらいたい。モロッコのホスピタリティがその豊かさを自然に与えてくれるよ。そして、どの部屋を選んでも、それぞれにパーソナリティがある。ホームメイドのお香が焚かれ、カラフルな地元の焼き菓子が待っていてくれるよ…来てくれた人たちへの喜びの気持ちを表してるんだ…ゲストとして、または友人として。残りのホテルの美しさは、自分で見つけて欲しい。それが、僕にとっての家だよ。 

自分が滞在する時に大事なホテルアメニティだからこそ、La Maison de Tangerにも取り入れたというものはありますか?  

Alex:ツアーは、自分が絶対に必要としているものと同じくらい、他の人が何を望んでいるのかを必ずしもよく示すものではないけど、僕の場合は、良いベッド、静かな部屋、良いシャワー、非の打ち所がない朝食とプレミアムコーヒーかな。それらは、メゾンに到着してすぐに手をつけたよ。僕らは各部屋で眠り、お互いのメモを見比べて意見交換した。全ての旅行がストップし、なかなかタンジェから動くのが難しくなったコロナの時期にアフリカ大陸でホテルを購入したことの一筋の光は、この場所を色々と見渡して、すぐに修繕するのが割と簡単だったことだ。     

Jeffと僕が、ホテル購入後、すぐに導入したかった最初の要素は、ホームメイドのモロッコ料理をゲストに提供することだった。モロッコの特色は、非常に繊細で優美な香り、スパイス、食物や海鮮の新鮮さにある。だから、僕らにとっては、最初から絶対に必要不可欠なもので、プロフェッショナルなミュージシャン兼音楽ビジネスで働く前に、モントリオールの人気レストランでフレンチシェフをしていたJeffは、食事のメニューをどうすべきかはっきりと分かっていただけでなく、何よりも、食事体験において、何を探し求めているかを把握していた。もしも、Jeffが肉食系なら、僕はリベラルなペスカタリアン系(肉は食べないけど魚は食べる)で、シェフのIlhamはJeffの期待をあらゆるレベルで越えたんだ。その日や季節によって変わる独特の香りなしに本物の”家”は存在しないからね。だから、食事に関することがまず第一だった。

それと同じ望みをもって、ゲストや友人たちを心地良い環境に迎えたいと思って、バンドThe Long ShadowsのキーボディストであるMiss Isabelに協力してもらったんだ。彼女はここ数年、自分でお香を作ったりしていたから、そのユニークな香りをLa Maison de Tangerに取り入れないわけにはいかなかった。特に、家の香りが持つアイデンティティを確かなものにすることが、どれだけ大事か話している僕を聞いていたから。ただ良い香りのする場所にしたいってだけじゃないんだ。その場所での思い出と香りを関連付けることについてさ。いつか、どこかで同じ匂いをかいだ瞬間に一気にタンジェにいるような感覚になれるように。それって、色々な意味で落ち着きを与えてくれると思う。だからこそ、僕らにはフルタイムの庭師がいて、中庭などの花や木の手入れをしてもらっているんだ。    

ドリンクとカクテルも、メゾンの発展に欠かせない要素だった。アルコール取り扱いのライセンス取得に2年近くかかったけど、どのステップもその価値があったよ。だって、ツアーや旅行先で買ってきたユニークなアルコールのセレクション中で、量よりも質の高いものを提供したいと思ったからね。そうすれば、ゲストは新鮮なタンジェリンの風を楽しみながら中庭やテラスでリラックスできるし、またはメゾンの室内で他のゲストや友人たちと素晴らしいひと時を持つこともできる。 

だからこそ、メゾンのようなホテルを持ちたかったんだ。人が一瞬でも携帯やタブレットの画面から離れて、他の人たちと交流をするような。それが僕らの家の最も素晴らしい要素だと思う。だって、ここには世界中から様々な人たちを迎えるし、それぞれの人生経験も違う。僕のような実験音楽アーティストが、レバノン出身の医師と友人になれるような、ニュージャージーからのアメリカ人夫婦がマルセイユからの2人のフランス人姉妹と出会い、来年には一緒にオーストラリアへ行く計画をするような特別な場所を作りたいんだ…芸術、文化、人生経験についての話ができる場所…それが僕のヴィジョンだよ。北日本の限定ウイスキーや、新鮮なジュース、地元のお茶やプレミアムコーヒーを手に持ちながらね。

このメゾンを確固たるものにするのは、そこに滞在する人であり、共に分かち合うユニークな瞬間だ。メゾンの美しい装飾は、その経験をより一層、記憶に残るものにするだけ。だって、ただ豪華絢爛っていうだけなら、それは要点を完全に見逃しているからね。